• 2019年11月16日 〈風邪・インフルエンザの予防〉
  • 園内で最も多くの園児の罹患する疾患は風邪です。『風邪』と一括りにしても症状は様々で、発熱、喉の痛み・腫れ、咳、鼻水・鼻詰まり、腹痛・下痢等の症状が重複して現れることが多いです。月齢が低ければ上手く症状を伝えることが難しく、早い段階で保護者の方がお子様の異変に「気付く」ことが大切になってきます。保育園でも保育士がお子様の様子を伝えると共に「いつもとちょっと違うぞ!?」というような変化があればお伝えさせて頂いております。予防・早期受診・十分な休息が風邪を悪化させず、ひいては一番の防御になると考えております。

    多くの風邪はウィルスによる感染で起こります。その代表ともいえるのがインフルエンザです。通常の風邪もインフルエンザも同じ感染経路を辿りますので同じ方法で予防することが出来ます。

    感染を予防するためには感染の成り立ちを知ることが重要と考えます。

    手指に付着していたり、空気中に浮遊する異物(ウィルスや病原体)が鼻腔や口腔内に侵入すると、粘液で覆われた気道の上皮細胞の表面にウィルス等が付着し、上皮細胞の中にウィルス自身の遺伝情報を含んだ物質を放出し、感染が起こります。人体はこういった外部からの異物の侵入に備えて粘膜では粘液を分泌し、上皮細胞が外気に露出することを防ぎ、細胞表面にせん毛と呼ばれる細かい髭のようなものを持ち異物を外へ排出する機能を持っています。しかし空気が乾燥すると粘液も乾燥し減少、せん毛による排出機能も低下します。そうすると外から侵入してきた異物がダイレクトに上皮細胞へ接触し感染を許してしまうことに繋がります。

    このことが空気の乾燥する冬に風邪やインフルエンザを流行させる大きな要因であると考えられています。

    呼吸により外気を取り込んでいる上気道には自分で感染を防ぐ機能は持っているものの、それだけで感染を防ぎきることが出来ません。特に大人の半分以下とも言われる子どもの免疫力だけでは集団生活における風邪・インフルエンザの流行拡大を防ぐことはできないのです。

    言い尽くされていることですが風邪・インフルエンザの予防には以下の4点に留意しましょう。

    ①うがい手洗いです。うがいは外界から侵入してきた異物を物理的に排出することを助ける働きがあるとともに、咽頭までの加湿もすることが出来ます。手洗いは手指についてしまった病原体を洗い流し口腔や鼻腔に入れないという効果があります。有機的な汚れを落とすだけでなく病原体となりうる異物の侵入経路を断つということになります。外出先や直ぐに手洗いできない場面などでは殺菌成分の含まれている手指消毒剤等を利用されているご家庭もあるのではないでしょうか。

    ②マスクの着用です。咳エチケットについても昨今言われていますが、異物の侵入を感知したり、感染を起こしてしまった後、身体は異物を排出するために咳やくしゃみをします。一般に咳をすると3メートル、くしゃみでは6メートル程飛沫が飛散すると言われています。園児程の年齢では他人との身体的な距離が近いのが一般的で、マスクを嫌がることもあるかもしれませんが自身と他の園児を感染から守る為にはとても有効な手段です。ただしマスクの内側、外側共に病原体が付着していると考えて、むやみに外したり触ったりしないことが重要です。咳をするときに手で口元を覆う事も大事なマナーですが、咳やくしゃみのその口元を覆った手には沢山の病原体が付着しているかも知れません。速やかに手洗いをしたいものです。こういった場面でも先程の手指消毒剤が有効になることもあるかも知れません。

    ③負けない体力づくりも忘れてはいけません。風邪・インフルエンザに罹ってしまってからも勿論なのですが、日頃から好き嫌いせず食事をすることで体調が整い、抵抗力や予備力が備わります。また、栄養素ではありませんが水分摂取も十分にしましょう。粘液を十分に分泌させられれば防御機能が高まりますし、細胞の代謝も良くなります。体温が上がり、呼吸回数が増えたり、解熱の為発汗している体の恒常性を保つためにはとても重要な役割を担っています。そして十分な栄養をしっかり摂った後は体を十分に休ませ良質な睡眠をとりましょう。体は眠っている間にホルモンを分泌し、成長と共に自己修復と言って日中傷ついた組織を修復したりしています。また特に代謝の活発な子供時代の睡眠が持つ意味は大人の疲労回復とは違った重要な役割もあります。生活リズムのメリハリを大事にしましょう。

    ④空気の加湿もポイントです。ご家庭には湿度計がありますでしょうか。空気中の湿度が40~60%程度が快適と言われています。湿度が30%を切るとインフルエンザの感染力が格段に上がると言われています。乾燥した空気中は塵や埃と共にウィルスが舞い上がりやすくなり、結果感染を広げてしまいます。

    ここで紹介する予防は風邪・インフルエンザに限らず、感染性胃腸炎等の消化器の感染症にも共通して有効です。

    風邪・インフルエンザに罹ってしまったら、熱の状態や体力にもよりますが、先ずはしっかりと休みましょう。また、早めに医療機関を受診し適切な治療・投薬を受ける事も勿論大事です。大人のように「週末まで何とか頑張ろう!」や「今日乗り切って明日充分に休もう!」というような調節を子どもはできません。毎日真剣に遊び、食べ、学び、成長している子どもにとって、集団で他のお友達が存分に楽しんでいる状況で自分だけ休んだりすることはとても難しい事です。子どもでも無理は出来てしまうのですが、それが風邪・インフルエンザを長引かせることにも為り兼ねません。長期化した風邪・インフルエンザから肺炎などのより重篤な疾患へ移行してしまう可能性もあるのです。

    風邪やインフルエンザに罹ってしまったら、感染力が強くご家庭で看病されている場合、保護者の方にもうつりやすいものです。完全に隔離して療養することが難しい兄弟やご家族も栄養と睡眠を十分にとるようにしてご自身が感染しないための対策もとるようにしてください。そして担任や保育園の職員にも状況を是非お知らせください。お子様の健康管理の要は何と言ってもご家庭です。保育園スタッフとしっかりと連携し、お子様の健やかな成長を応援して参りましょう。

    (看護師 水吉)