昨今の新型コロナウィルス感染症の流行からご家庭の皆様にも【感染予防・感染対策】という言葉が身近なものになっていることと思います。厳密には違う意味を持つ言葉ですが皆さんがイメージされる行動は同じかも知れません。
保育園においての感染予防のガイドラインは2018年に厚生労働省が改訂したものを基準にしておりましたがこの数年の間に何度も細かな変更や改訂がなされて新型コロナウィルス感染症が5類になったことを含め乳幼児の集団生活における留意点などがよりフォーカスされる状況となっています。
今回は乳幼児の集団生活の感染予防という視点でお話したいと思っています。
感染症がある集団の中で「流行」するためには条件があります。①感染源②感染経路③宿主この三つの要素がそろうことで先ず感染が起ります。そしてそれが集団の中に持ち込まれることで「流行」へと進んで行くのです。
乳幼児は生活習慣の獲得の時期です。ここで衛生に関する日常生活動作も衛生習慣も獲得し自分で行える様に成長・発達しているお子さんたちの集団が保育園であり各クラスになっています。衛生に関する価値観や感覚もご家庭によって様々あるかと思います。ご家庭により異なるだろう事があり、例えば洗面所でタオルを使っているご家庭もあれば、ペーパータオルを使っているご家庭もあるでしょうし、洗面所とトイレ、台所など場面によって使い分けをしたり、交換・洗濯頻度も違っているかも知れません。
手洗いについて考えると、獲得するべき最も基本的な衛生習慣は手を洗うタイミングと方法です。手を洗わなければならないタイミングとして重要なのは①見て分かる汚れが付着したとき②食事の前③排泄の後です。このタイミングでの手洗いについては乳幼児でも獲得したい衛生習慣です。手洗いの方法については新型コロナウィルス感染症の流行前から石けんを用いた流水による手洗い方法が子どもに人気のアニメやキャラクターを使って厚生労働省をはじめとした行政や研究教育機関の関連動画などを見たことがあるのではないでしょうか。なでしこ保育園でも石けんでの手洗いにつて汚れモデル(食紅と寒天を混ぜた液体状もの、紫外線ライトで可視化出来るもの)を用いて調理、保育、保健の職員で自身の手洗いを振り返を行い、園児にも実際にどんなところが汚れ易いのか、洗い忘れ易いのか等を体験しながら一緒に考えてみました。これが集団における「感染経路を断つ」ことになり、園児自身に身につけてもらいたい感染予防策のひとつです。必要なタイミングで確実な手洗いを実施することが感染予防になると言うことは既に皆様も今回の新型コロナウィルス感染症流行により実感されていることと思っています。
次に「宿主」ですが、個人の抵抗力、免疫力が影響するものでもありますが、保育園ではお子様の月齢や生活環境(家族歴など)によってかなりの違いがあります。お母さんのお腹の中は勿論無菌です。お腹の中で外の環境での生活に適応できるようになるまで準備し、いざ生まれて来るととたんに通常の空気中には様々な物質があり色々なものに出会いながら成長して行きます。
また定期及び任意での予防接種を適切な時期に行うことで感染症が流行しても罹患しない予防策となります。そして抵抗力や免疫力を低下させず十分に発揮するためには、バランスのとれた食事と適度な運動、睡眠が大切です。お子様の一番近くにいらっしゃる保護者の目で、毎日の生活をリズム良く進めて頂き、少しの変化に目を向けて頂ければと思っています。子どもは自身の体調の変化をうまく伝えられない、表現できないことも多くありません。同じ時間に就寝しても眠りが浅く夜中に起きてしまったり、朝なかなか起きられないことが倦怠感や発熱の前兆であることも多いです。
食事についても普段は好物であっても進みが悪かったり、水分をいつもより多く摂る逆に少なくなる等「あれ、ちょっと違うな」と言うことがサインだったのかと後から気付くこともあるかも知れません。勿論子どもにも気分や好みがありますので日常全てを病気や感染症と結びつけていたら保護者の皆様もお子様との時間を楽しめないかも知れません。
なでしこ保育園では園やクラスのお子様で罹患報告を受けた伝染性の疾患名は掲示をしてお知らせしています。そういった掲示やアナウンスのあった際には特にご留意頂いてお子様をみて頂けると良いかと思います。
そして、体調が優れないときにはお子様は不安や緊張が強くなるものです。安心できるお家で保護者の方と心身共に回復できる様にしてあげてください。予防的な休息は罹患した場合には回復を早め、悪化させないことに繋がります。保護者の方がお子様の変化に気付き対応してくれたという経験はお子様にとっては安心感と信頼を強めることにもなります。集団においては感染源を集団に持ち込ませないことにもなり、集団感染を防ぐことにもつながります。
また疾患へ罹患した際の回復や他の人へ拡散してしまう状況は状況等により個人差のあることです。新型コロナウィルス感染症については乳幼児ではあまり重症化しないと言われていましたが、δ(デルタ)株以降罹患する乳幼児の数も増え、重症化の報告も聞きました。そして既存のインフルエンザでは髄膜炎などの重篤な合併症を発症しやすいと言われています。喘息などの既往があるとその発症率も変ります。予防接種については副反応のことなど不安な情報が流れてくることもあります。信頼できる医療機関に健康なときにご相談頂くのが良いと思います。マスコミでは殊更、薬剤特に予防接種の副反応については特集を組んだ報道をされることがありますが、情報源を確認して信頼できる情報であるのか、発生の頻度と重症化した際の心身へのリスクなど総合的に判断したいものです。
どちらのご家庭でも家族元気に過ごしたいという思いは同じであると思います。そんな保護者の皆様と子ども達の健康に少しでも寄与していきたいと思っております。 (看護師 水吉)